暮らしに役立つ豆知識

「熱があるのに診てもらえない」——5類移行後も残る医療現場のズレと患者の戸惑い

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🟡 はじめに

2023年5月、新型コロナウイルス感染症は感染症法上「5類感染症」に引き下げられ、社会は少しずつ「日常」を取り戻しました。
しかし、実際に病院を受診しようとすると、いまだにこうした言葉を耳にすることがあります。

「発熱がある方は、まずお電話ください」
「熱がある方は本日は診療できません」

——熱があるから病院へ行く。これはごく当たり前のことのはずです。
それなのに、なぜこんなことが起きているのでしょうか。
今回は、制度・医療現場・患者それぞれの視点から、この「熱があるのに診てもらえない」問題を深掘りしてみます。


🧭 1.本来、病院は“熱のある人を診る場所”だった

インフルエンザや風邪、肺炎、胃腸炎……。
発熱は多くの病気の初期症状であり、昔から内科や小児科は発熱患者を日常的に診療してきました。

コロナ禍以前は、発熱していればそのまま病院やクリニックに行き、待合室で順番を待って診察を受ける——これが普通の光景でした。
「事前連絡」「別室診療」「発熱外来」などという言葉すら、ほとんど一般には知られていなかったのです。


🏛 2.5類移行で制度上は“普通の受診”に戻ったはず

厚生労働省は、5類移行後に以下のような方針を示しています。

「限られた医療機関でのみ受診可能であったのが、幅広い医療機関において受診可能になる」
(厚生労働省『新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について』より)

つまり、制度上は発熱患者も一般の外来で診療を受けられる体制に戻る、というのが国の基本方針です。
発熱があるからといって、受診を制限される法的根拠は、現在はありません。


🧑‍⚕️ 3.それでも病院が発熱患者を制限するワケ

ではなぜ、現実には「発熱患者は事前連絡を」「受け入れできません」といった対応が残っているのでしょうか。
そこには、医療機関側の事情があります👇

背景内容
🦠 感染リスクコロナは空気感染・無症状感染のリスクが高く、院内クラスターで休診となれば経営にも打撃が大きい
👩‍⚕️ 人手不足発熱患者の診察には防護具・検査・別室対応が必要で、小規模医院では対応しきれない
🏥 診療報酬・コスト問題コロナ特例(公費負担や診療加算)が縮小し、対応コストが自己負担になってしまった
📝 運用慣例の固定化3年間続けた「発熱=別枠診療」の慣行がそのまま残ってしまっている

つまり、病院側としては「診たくない」わけではなく、「診療体制や感染リスクの都合で“診れない”」というケースも少なくないのです。


📌 4.患者側の戸惑いと不満は正当

一方、発熱した患者側の立場から見れば、この状況は大きな混乱を招いています。

  • 夜間や休日に診てもらえず、受診先が見つからない
  • 「発熱外来」に電話してもつながらない
  • 近所のクリニックで断られ、遠方まで移動する羽目になる
  • 子どもや高齢者では移動自体がリスクになる

特に、「熱がある=まず電話で確認」という文化は、コロナ禍で急に根付いたものです。
高齢者や子育て世代にとっては非常に不便で、医療へのアクセス障壁にもなっています。

👉 「熱があるから病院へ行く」ことが当たり前だった時代から見れば、今の現場対応には大きなギャップがあるのです。


🏛 5.法的にも“正当な理由なく診療拒否はできない”

実は、病院が一方的に発熱患者を断ることは、法律上は無制限に認められているわけではありません。

日本の医師法第19条には、こう明記されています👇

「診療に従事する医師は、正当な事由がなければ診療を拒んではならない。」

つまり、発熱しているという理由“だけ”で診療を拒否するのは、原則として認められません。
ただし「設備がない」「医師がいない」「感染リスクが高い」などの正当な理由がある場合は、受診を断ることは可能です。

そのため現実には、患者側が従わざるを得ないケースが多く、「制度と現場」の間にズレが生じているのです。


🌐 6.受診できないときの現実的な対処法

もし「発熱がある」という理由だけで病院に断られた場合は、以下の方法が現実的です👇

  1. 近隣の別の医療機関に連絡して受診可能か確認する
  2. 都道府県や市町村の「発熱患者受診・相談センター」に電話し、受診先を紹介してもらう
  3. 重症の場合は迷わず救急対応(119や夜間救急)を利用する

とくに②の相談センターは5類化後も多くの自治体で継続されており、夜間・休日でも利用できます。


🟢 7.制度と現場のズレを埋めることが課題

「発熱患者は診療対象」という制度上の方針と、
「体制が整わず受け入れを制限する」現場の対応。
このギャップこそが、いまの医療体制の最大の課題です。

厚労省や医師会も、5類移行後は一般外来での発熱診療に戻す方向を打ち出していますが、実際にそれが全国のクリニックで徹底されるには、もう少し時間がかかりそうです。


✍ まとめ

  • 本来、病院は発熱患者を診るのが当たり前
  • 5類移行後、制度上は普通に受診できる体制に戻った
  • しかし現場では感染対策や経営上の理由で制限が続いている
  • 法的には「正当な理由なき診療拒否」は認められていない
  • 現実には、制度と現場の“ズレ”が患者の戸惑いを生んでいる

🗣 編集後記

「熱があるから診てもらえない」——これは本来、あってはならない話です。
医療は、制度と現場、そして患者の信頼が三位一体になってこそ成り立ちます。

制度は戻ったのに現場が追いつかない、この過渡期をどう乗り越えるか。
これは、コロナ禍を経た日本の医療が抱えるひとつの“宿題”といえるでしょう。

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