序章 ― スポーツは「競技」から「巨大ビジネス」へ
スポーツの世界は、今や単なる競技の場を超え、巨額の資金が動くビジネス産業として成長しています。選手の収入は、試合での給与や賞金だけでなく、スポンサー契約、メディア出演、ブランド展開、投資活動など多岐にわたります。
米経済誌Forbes(フォーブス)は2025年5月、最新の「世界で最も稼いだスポーツ選手ランキング」を発表しました。本記事では、その上位10名を収入構成や背景とともに徹底解説します。
出典:Forbes The World’s Highest-Paid Athletes 2025(2025年5月発表)
総論 ― 給与とスポンサー収入の二本柱
2025年のランキングを俯瞰すると、次の3つの傾向が際立ちます。
- 中東資本の台頭
 サウジアラビアのサッカーリーグが欧州スターを高額契約で獲得し、ランキングを押し上げている。
- スポンサー依存型の高収入モデル
 大谷翔平やステフィン・カリーのように、年俸よりもスポンサー契約の方が収入の大半を占める例が増加。SNSのフォロワー数が契約額に直結する時代となった。
- アメリカ市場の巨大性
 NFL・NBA・MLBといった米国内プロスポーツは、放映権料と広告収入の規模が桁違い。国内市場だけで世界トップレベルの収益を誇る。
2025年 世界スポーツ選手 年収トップ10(Forbes推定)
| 順位 | 選手名(英語表記) | 競技 | 推定総収入(億円) | 主な収入源 | 
|---|---|---|---|---|
| 1 | クリスティアーノ・ロナウド (Cristiano Ronaldo) | サッカー | 約412億円 | 年俸、スポンサー、SNS | 
| 2 | ステフィン・カリー (Stephen Curry) | バスケット | 約234億円 | 年俸、スポンサー、ブランド事業 | 
| 3 | タイソン・フューリー (Tyson Fury) | ボクシング | 約219億円 | ファイトマネー、PPV、メディア出演 | 
| 4 | ダック・プレスコット (Dak Prescott) | アメフト | 約206億円 | 年俸、スポンサー | 
| 5 | リオネル・メッシ (Lionel Messi) | サッカー | 約203億円 | 年俸、スポンサー、放映権契約 | 
| 6 | レブロン・ジェームズ (LeBron James) | バスケット | 約201億円 | 年俸、スポンサー、映画・投資 | 
| 7 | フアン・ソト (Juan Soto) | 野球 | 約171億円 | 契約金、年俸、スポンサー | 
| 8 | カリム・ベンゼマ (Karim Benzema) | サッカー | 約156億円 | 年俸、スポンサー | 
| 9 | 大谷翔平 (Shohei Ohtani) | 野球 | 約154億円 | スポンサー、年俸 | 
| 10 | ケビン・デュラント (Kevin Durant) | バスケット | 約152億円 | 年俸、スポンサー、投資 | 
※1ドル=150円換算/単位:億円
各選手の収入と特徴(詳細解説)
1位:クリスティアーノ・ロナウド(サッカー/ポルトガル)

サウジ・アル・ナスル所属。年俸は2億ドル超に加え、ナイキやClearなど多数のスポンサー契約を保有。Instagramフォロワー世界一による広告収入も巨額。
2位:ステフィン・カリー(バスケット/米国)

ゴールデンステイト・ウォリアーズの顔。年俸はNBA最高水準、さらにアンダーアーマーとのライフタイム契約や自社ブランド事業からも収入。投資家としても活動。
3位:タイソン・フューリー(ボクシング/英国)

ヘビー級世界王者。試合1回で数千万ドルのファイトマネー、PPV(有料視聴)収益、Netflix番組出演料など多角的な収入。
4位:ダック・プレスコット(アメフト/米国)

NFLダラス・カウボーイズの司令塔。スポンサー契約も豊富で、広告出演料が年収を押し上げる。
5位:リオネル・メッシ(サッカー/アルゼンチン)

MLSインテル・マイアミ所属。年俸のほか、アディダス、ペプシなどのスポンサー契約に加え、Apple TVのMLS放映権契約の一部収益も享受。
6位:レブロン・ジェームズ(バスケット/米国)

NBA歴代屈指のスター。ナイキとの生涯契約、映画制作会社運営、投資事業など競技外収入も多い。
7位:フアン・ソト(野球/ドミニカ共和国)

2024年末、メッツと15年総額7.65億ドルのMLB史上最大契約を締結。契約金分割受け取りとスポンサー契約が高収入を支える。
8位:カリム・ベンゼマ(サッカー/フランス)

サウジ・アル・イテハド所属。欧州からの移籍で年俸は急増。ブランドアンバサダー契約も多数。
9位:大谷翔平(野球/日本)

ドジャース所属。年俸は抑えつつも、ニューバランス、セイコー、ポルシェなど世界的スポンサー契約が収入の大半を占める。広告価値はアジア市場で断トツ。
10位:ケビン・デュラント(バスケット/米国)

NBAの高額年俸に加え、スタートアップ投資やメディア事業で利益を得る。スポーツ投資家の代表格。
傾向分析 ― 「稼ぎ方」はこう変わった
- 給与依存型から多角的収益型へ
 競技成績だけでなく、SNS発信やブランド展開で稼ぐ選手が上位を占める。
- 市場別の特徴
 米国スポーツは国内市場だけで巨額収益を確保できるが、サッカーはグローバルスポンサーの幅広さが強み。
- 新興市場の影響
 サウジアラビアの資本流入がランキング構造を変化させている。
結び ― 次のトップは誰だ?
2025年ランキングから見えるのは、「競技+ビジネス」の二刀流が必須の時代であること。
さらに将来を展望すると、以下の2つの新潮流が明確です。
- eスポーツ選手の台頭
 例:Dota2「The International」では賞金総額が60億円超。配信収益やスポンサー契約を合わせれば数十億円級の選手が既に存在し、将来的には100億円規模でTOP10入りも可能。
- 女性アスリートの浮上
 例:大坂なおみは2022年時点で約80億円の収入。女子サッカーW杯は19億人超が視聴し、スポンサー契約が急拡大。報酬増が続けばTOP10入りは時間の問題。
👉 次回のランキングでは、eスポーツや女性アスリートが世界のトップアスリートと肩を並べる可能性が十分にある。スポーツビジネスの新時代は、すでに始まっている。


