序章:切符に込められた思惑
スピード違反や信号無視で渡される「青切符」。多くの人は「納めた反則金は自治体の財源になるのだろう」と考えるかもしれません。ところが実際には、青切符による反則金も、赤切符による罰金も、その行き先は国庫です。地方自治体の自由に使える税収にはなりません。
ただし例外もあります。駐車監視員制度による「放置違反金」は都道府県の収入となり、駐車場整備や交通安全対策に使われます。また、国庫に入った反則金の一部は「交通安全対策特別交付金」として地方自治体に配分されます。とはいえ、市民が直接納めたお金の多くが国庫に吸い込まれているのは事実です。
反則金収入の規模
財務省の資料によれば、交通反則金の収入は毎年600〜700億円規模で推移しています。さらに刑事罰としての罰金(交通違反を含む刑事事件全体)は1,000〜1,500億円規模です。合算すると、交通違反関連を含めて年間およそ2,000億円に上ります。
国家予算全体(100兆円超)に比べればごくわずかですが、「租税外収入」として国の歳入に組み込まれている点は重要です。つまり、反則金収入は「副次的な結果」ではなく、あらかじめ「見込み額」が歳入予算に計上されているのです。
予算と実績の比較
実際に過去数年の予算見込みと実績を比較すると、その構造がよく見えてきます。
| 年度 | 予算見込み額 | 実績(決算額) |
|---|---|---|
| 令和4年度(2022年度) | 約541億円(54,113,746千円) | 約541億円(同額) |
| 令和5年度(2023年度) | 約494億円(49,447,941千円) | 約452億円(45,224,966千円) |
| 令和6年度(2024年度) | 約494億円(49,447,941千円) | 未公表(見込みのみ) |
令和4年度は予算と実績がほぼ一致し、帳尻が見事に合っています。令和5年度は予算を約42億円下回りましたが、それでも数百億円規模の収入が確保されています。令和6年度も再び約494億円を予算に計上しており、実績がどこまで追いつくかが注目されています。
この数字の並びを見ると、「500億円取り締まれと言っているのではないか」と市民が感じるのも自然です。政府や警察庁は「交通安全のための取り締まりの結果にすぎない」と説明していますが、建前と現実のギャップが存在していることは否定できません。
ノルマは本当にないのか
警察庁は一貫して「ノルマはない」と説明しています。確かに「今日は何件取り締まれ」と明示されることはありません。
しかし元白バイ警官の証言などからは「件数の目標」が組織的に存在していることが分かります。実際、交通課や白バイ隊では「検挙件数」が細かく管理され、少なければ評価や査定に影響することもあります。これは直接的なノルマではありませんが、「数字管理」という名のプレッシャーが現場にかかっているのは事実です。
メディアと市民の視点
メディア報道でも「ノルマは存在しない」とされつつも、同時に「目標件数」が設定されていることはしばしば指摘されています。市民の間でも批判的な声は強く、
「毎年600〜800億が予算化されているのにノルマがないなんてあり得ない」
「検挙数が減れば交付金も減る。現場が数字を気にしないはずがない」
といった意見も多く見られます。制度の建前と実態の間にある乖離が、市民の不信感を生んでいるのです。
交通安全か、財源確保か
交通取り締まりが事故抑止に効果を持つことは疑いありません。飲酒運転の減少やシートベルト着用率の向上などは、確実に取り締まりの成果です。
しかし、反則金収入が予算に組み込まれている以上、「財源確保」という影は常に付きまといます。事故多発地点よりも「検挙しやすい場所」で速度違反の取り締まりが行われがちだという批判も、この構造と無関係とは言えないでしょう。
自転車にも“青切符”?次は自転車が“お財布狙われる”
そしてもう一つ、気になる展開があります。実は、2026年4月から自転車も「青切符」の対象となり、反則金の対象に組み込まれる見込みです。対象は16歳以上の自転車利用者で、信号無視・一時不停止・ながらスマホ・傘差し・2人乗りなど、113種の違反行為に反則金が科されることになるようですnpa.go.jp+7tokio-dr.jp+7lify.jp+7onlinestore.wimo.co.jpnpa.go.jp+5lify.jp+5onlinestore.wimo.co.jp+5。
自転車にまで「歳入の目標」が拡大するとなれば、その光景はあまりにも滑稽です。「お茶のついでに青切符」などという日常がやって来るかもしれませんが、それでも「安全のためです」と言われれば、またしても納得せざるを得ないのが、この制度の皮肉な現実です。
結びに代えて
交通反則金制度の建前は「交通安全の確保」であり、公式には「収入は副次的なもの」と説明されています。しかし、実際には毎年500億円前後の収入が歳入予算にあらかじめ組み込まれ、実績が精査されています。
市民が「結局、500億円取り締まれと言っているのと同じではないか」と感じるのは無理もありません。交通安全と歳入確保。この二つの目的が絶妙なバランスで共存しているのが、日本の交通反則金制度の現実です。
「安全のためです」と言われれば納得せざるを得ませんが、「それなら予算から外してごらん」と言いたくなるのも、人情というものでしょう。


